2007年9月20日
以前に描いたスケッチを基に
葉山(神奈川県)にあるカフェテラス「カフェ・ド茶屋」
(写真@A)の簡単なスケッチ(写真BC)。これを
参考に大きな紙に描くことに決める。
野外スケッチについて
野外スケッチは現地でたっぷり時間をかけて描き上げる人と、
短時間であっさりと描く人との2つのタイプがあります。
私は後者のほうで、2〜3号ぐらいのスケッチブックに淡彩風
の簡単なスケッチで済ませるようにしています。そしてこれは
後で大きな紙に描くための下絵として使います。下絵の段階
で失敗しても大丈夫という考えがあるので、リラックスして
のびのびと描ける利点があります。
紙を選ぶ
暖かな雰囲気”を出したかったので、少し黄色がかった
アルシュ(写真D)を選択。
紙選びについて
紙は作品の出来を最も左右する画材だと思います。
銘柄によって(細目・中目・粗目など)や、吸水制、色
などに違いがあり、それらの要素が微妙にからみ合い
ながらそれぞれの個性を生み出しています。ですから
描き方や作品の雰囲気に大きな影響を及ぼすのは
当然のことで、紙選びも重要になってくる訳です。
私は最近ワットマン(300g)という純白の紙を愛用して
いますが、今回は”長閑で暖かい雰囲気を強調”した
いこともあり、少し黄色がかったアルシュ(写真F)
で描くことにしました。また色を何度か重ねて深い色
を出したいという理由から、絵の具の定着力が強い
アルシュを選ぶのに躊躇はありませんでした。
鉛筆で下絵を描く
芯先の丸い鉛筆(B)で薄くアタリ線を描く。
構図や形が定まってきたら芯先を少し尖らせた
鉛筆(HB)で丁寧に描いていく。
この日はもう深夜12時ごろになっていたので、
今日はここで中断。
F まず全体に薄く塗ってみると、その絵の雰囲気がわかる。
9月24日 黄葉する山を塗る
背景の山が黄葉する様はにじみを多用することにした。
まず後方の山を渋いブルーでたっぷり塗り、所々黄色を
置いてにじませた。次に手前の山は水を塗ってから明る
いオレンジや黄緑を置いてにじませた。(写真GH)
H 紙を濡らし色を置くと、色がにじむ。
水加減によって広がり方が違う。
Aスケッチの際には
写真を何枚か撮って
おくと、そのときの
情景が蘇ってくる。
9月25日〜10月5日
鉢植えを描く
画面全体にかなり色が付いてきたので、ここで細かい
部分も描き始める。手前の鉢植えの植物は鮮やかな色
を使える数少ない箇所、あまり複雑にならないように色
をシンプルに置いてみることにする。(写真I)
樹木を描く
樹木の描き方は種類や状況によってさまざまだが、
私には陰影から聞き始める描き方が合っている
ようだ。対象物の色の濃い部分から塗った方が
後で明暗のバランスをとりやすい。(写真J)
樹木の陰影がある程度描けたら、葉の色を塗る
(写真K)
重ね塗りを繰り返す
建物・人物・山・樹木・鉢植えなど一通り彩色
が済んだので、この上に何度か色を重ねていく。
何度も色を重ねると、暗く濁ってくるので3回ほど
で終わらせたい。(写真L)
I手前の鉢植えはあまり細かくなく、大まかに色をつけることにした。
10月7日〜12日
アクセントをつけていく
画面全体の色が ほぼ目標の濃さになってきた。
ここからは細い筆に持ち替えて細部を描いたり、
アクセントをつける作業に入る。
終盤はアクセントをつける作業
絵を仕上げる段階になって、いつまでも太い筆
で描いていると画面に色がつき過ぎ、暗い画面に
なってしまいます。画面にある程度色がついたら
細い筆で(全体にではなく)局部的に描いていった
方がメリハリのある絵になります。
屋根に面相筆で細い線を描き、タイル状の
質感を出す。(写真M)
同じようにレンガにも細い線を描く(写真N)
鉢植えの下の枕木も線を描き木目を表現
(写真O)
アクセントをつける作業はとても細かく部分的な
作業なので、全体感を感じとることが難しい。
時々画面から2〜3メートル後ろにさがり、絶えず
全体のバランスをチェックしないと変に描きすぎ
てしまう。光の当たる白い壁は極力塗らないよう
に心がけた。(写真P)
G 【背景の山の色】 遠くのものは実際の
風景の色よりも淡く塗りたい
L 何度か色を重ねて塗った。目標の濃さに近づいてきた。
P アクセントをつけると、明るい部分が引き立って見える。
10月17日
最後のチェック
少々色を塗りすぎたようだ、絵が重苦しく感じる。
水を含ませた平筆(14号)で部分的に洗うことにする。
(写真Q)
画面を洗うときの注意点
たっぷりの水を含ませた筆でかるく擦るようにして
画面の色を溶かす。そのとき力を入れ過ぎると画面
の色が剥がれムラになるので注意してください。
色が溶けはじめたらティッシュをかるく押し当てて
色をとります。
完成
画面を洗い弱くなった部分に改めてアクセントを
つけて完成。(写真R)
「秋深む休日」(水彩/46,5×35,5p/アルシュ)
9月22日 主役から塗り始める
人によって、どこから塗り始め、どのような塗り方を
するかは千差万別だが、私はその絵の「主役」、また
は「印象深いところ」から塗り始めることが多い。
そうすることで絵の狙いを確認でき、イメージを膨ら
ませやすくなる。この絵の主役は「歩いている人」と
「テラスで賑わう人たち」のあたりだろう。まずはじめに
レンガ柵を薄い赤茶色で塗り、次に人物の陰を淡い
ブルー系の色で塗る。(写真E)
太い筆で建物の陰を塗る
建物の陰部分を太い丸筆(12号)で塗る。柔らかな
空気感を出したかったので、まず紙を水で濡らし、
にじますように色を置いた。(写真F)
樹木の陰影を大まかに塗る
左から朝日が差していたので樹木の右側が陰に
なる。光が当たっている右側はとりあえず塗ら
ないことにする。(写真F)
このページは1枚の水彩画を制作する途中で書き留たメモ書きのようなものです。
皆さんにご覧いただきたいのは勿論ですが、自分が何を思って描いたかを確認するページでもあります。